電気機関車

総論

明治40年の鉄道国有化以降の電気機関車の形式名は 明治40年式と昭和3年式とJR以降との3通りである。

なお、以下の記述の一部は明文化された規約に基づいておらず 筆者の推測によるものが含まれる。


明治40年式

この時期、機関車はほとんどが蒸気機関車であるため、電気機関車は、 その拡張として付番されている。したがって、 蒸気機関車についても参照されたい。

型式番号と車両番号との合算式になっているため特別な番号区切りがない。 このためか、ナンバープレートに形式名入りのものが見られる。 蒸気機関車に用いた番号範囲の外である、10000〜の番号が与えられた。 ただし、昭和初年頃には、蒸気機関車の形式番号が9999では不足となり、 10000以上の番号で蒸気機関車の形式として使用されたものもある。

なお、明治40年の段階では、電気機関車は碓井峠でしか使用されておらず、 10000以上という番号区分をアプト式電気機関車用と考えるか、 一般的に電気機関車用と考えるかは難しいところである。 実際に、碓氷峠以外の線区で使用され始めたのは大正15年頃で、 この時期に登場した電気機関車は、形式番号が10000未満を用いているので、 この時点で命名規約が変更になったと解することもできる。

1000や6000、8000直後の 形式のみが定められているので、 蒸気機関車の空き番号を転用したとも考えられる。

以下の表では、大正15年以降昭和3年以前に実在した形式名から 番号区分を推定したが、具体例が乏しいため確実とはいえない。

番号内容
1000〜59994動軸、貨物用?
6000〜79994動軸、旅客用?
8000〜99996動軸
10000〜アプト式


昭和3年式

先頭に英文字Eをつけ、それに引き続き、 動軸数により1動軸(実際には存在せず)からアルファベット順に英字1文字を当て、 その後ろに2桁の数字を連ねて形式名とする。 形式名の後ろに空白をおいて、1から振られた桁数不定の車両番号が続く。

形式番号は、運用最高速度によって85km/hを境に2分している。 これは、当時の貨物列車の運行速度が85km/hより遅かったためで、 貨物用、旅客用で区分する意図であった。 しかし、その後、貨物列車の最高速度が向上した結果、 現在では、この境目はあまり意味が無くなってしまった。
交流電化が行われるようになり、電気機関車も電気方式が異なる車両が 登場するようになり、これを先の最高速度と組み合わせて番号範囲を決めている。
それぞれの中は、原則として制定順に番号を付ける。

重複形式については、全記号番号式で識別する。

表にすると以下のようになる。
動軸数記号
2軸EB
3軸EC
4軸ED
6軸EF
8軸EH
動軸数1,5,7および9以上は日本では実在していない。

番号範囲電気方式最高速度
10〜29直流85km/h以下
30〜39交直流
40〜42直流アプト式
44〜49試作機
50〜69直流85km/h超
70〜79交流
80〜89交直流
90〜99試作機

40〜42と44〜49については当初からの区分というよりは、 事実上そうなってしまったと考えるべきだろう。
40〜49は、全てアプト式用だったものを試作機用に転用したものと思われる。 この転用は、碓氷峠でのアプト式廃止方針の決定時期と交流電化開始時期が ほぼ同時だったことが関係があるかと思われる。

44〜49の試作機と90〜99の試作機との区分は明確には不明である。 前者が低速機、後者が高速機という解釈もできるが、確認できていない。 44〜49は交流試作機・交直流試作機が該当しているので、電気方式で区分したとも 考えられる。ただし、これらは後に全て90〜99に改番されている。 このため、最終的には、試作機は電気方式と関係なく90〜99を使用することになる。

高速直流機は、交流機の技術をフィードバックした「新性能電機」と、 それ以前の「旧形電機」とがある。 前者は60〜69、後者は50〜59を使用しているが、 当初から想定されていた公式の区分ではなく、 結果的に60まで飛ばしたと解釈すべきだろう。

車両番号は区分方式であるため、形式名と車両番号との区別は容易である。


JR貨物式

JR以降に登場した新形式は、すべてJR貨物の車両である。

先頭に英文字Eをつけ、それに引き続き、 動軸数により1動軸(実際には存在せず)からアルファベット順に英字1文字を当て、 その後ろに3桁の数字を連ねて形式名とする。 形式名の後ろにハイフンをおいて、1から振られた桁数不定の車両番号が続く。

英字部分は昭和3年式と同じ。

数字は100位のみ意味づけがあり、10位と1位は形式の識別用。
100位数値電気方式駆動電動機
1直流直流電動機
2交流電動機
3その他
4交直流直流電動機
5交流電動機
6その他
7交流直流電動機
8交流電動機
9その他

結果的に、9以外は電気方式に関して、 昭和34年式の新性能電車と同じことになっている。
従来、試作形式に使用されていた先頭9は、この方式では 量産形式に使用されることになっている。 実際、既に登場している試作機は量産機形式に対する 番台区分(900番台)で対応している。

現状では、形式は10位の数値が1つずつ進められており、 1位の数値は0しか用いられていない。 1位の数値は小規模な仕様変更や改造の際に使用されるものと 推定している。


具体例についてはここを参照
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