2003/9/17 作成
2008/1/12 更新

新性能電車

総論

在来線の列車を電車化する方針が定まった結果、 国鉄では、昭和30年代から新型電車が急増することとなった。 これらを新性能電車と総称する。 新性能電車の形式は、構造用途を示すカナ記号に続けて3桁の数字で表される。 カナ部分と数字部分とがセットで形式であるとする立場なので、 いずれかに相違する部分があれば、別形式として、重複を許す。

奇数とそれから1減じた偶数とが1組で、奇数側の数値をもって系列名としている。

JR東日本のある時期以降の車両のみ、数字の先頭にEが付くが、 それを除くと国鉄時代の基本を継承している。

JR四国で新規設計した電車は、この規約に準拠しない。

なお、以下の記述の一部は明文化された規約に基づいておらず 筆者の推測によるものが含まれる。


  1. 昭和34年式

    カナ記号

    運転機器に関する仕様を示す部分に、用途・客室構造に関する仕様を示す部分を 連結したものからなる。

    運転機器に関する仕様部は、以下の4通り。
    記号車種
    中間電動車
    クモ制御電動車
    制御車
    付随車
    用途・客室構造に関する仕様部は客車に準ずる。

    数字は以下の意味づけとなっている。
    数字位置意味
    100位電気方式
    10位車両の主な用途
    1位形式の識別用

    100位の数字

    電気方式を示す。
    数値意味
    1〜3直流電車
    4〜6交直流電車
    7〜8交流電車
    9試作電車
    「試作電車」は、本来、電気方式区分ではないはずなのだが、 多少、混同されて使用されている。実例として、901系(→209系)、E991系がある。

    10位の数字

    車両の主な用途(設計時基準)を示す。
    ただし、時期的に解釈に揺れがあり、 これが初心者を混乱させる原因の1つとなっている。

    新性能電車誕生時の意味新性能電車発展の意味
    数値意味数値意味
    0〜4近距離用0通勤用
    1〜3近郊用
    4非旅客営業用
    5〜8長距離用5〜7急行用
    8特急用
    9試作9試作

    1位の数字

    形式識別用であるが、形式名としては奇数のみを用い、 その値から1減じた偶数とで1つの系列とみなす。
    電動車とそれ以外とで意味が若干異なる。
    車種数値意味
    電動車奇数主制御器搭載
    偶数主制御器非搭載
    注意集電装置付きのものは偶数が多いが、定義ではない。
    付随車、制御車奇数基本的な形式
    偶数偶数向固定設計車、奇数形式との違いを強調したい場合
    注意151系、181系の場合、サハの設計がモハ偶数形式を基準と したため、偶数形式が基本となっている。
具体例についてはここを参照

旧型国電

総論

新性能電車登場以前に設計・製造された国鉄電車を旧型国電と呼ぶことが多い。 旧型国電の形式は、構造用途を示すカナ記号に続けて2桁の数字で表される。 カナ部と数字部分とは独立しているとする立場なので、 カナ部が異なっていても、数字が重複しないように付番されている。 ただし、末期の改造車種では、新性能電車のように番号が重複した形式が 発生している(例:サロ85改造のクハ85)。

80系湘南電車登場までは、「系列」という考えが薄く、かなり自由に混結編成を 実行していたので、趣味的に見た「系列」と「番号」との関係は 一般に複雑である。

カナ記号部分は新性能電車と同じであるが、 昭和3年式では「クモ」と「モ」の区別がなく、 どちらも「モ」で表現されていた。 昭和34年改正時には、

  1. 制御電動車は「モ」から「クモ」に変更する
  2. カナ記号+2桁数字の組み合わせで形式名とする
の2点について改正が行われた。

昭和3年式以降の旧型国電についてはF誌No.562,p.93, 手塚一之「郵便車と荷物車」を参考にした。

数字の意味

  1. 昭和3年式 2桁の形式と3桁の番号で構成される。
    これにカナ記号が前置されるが、形式は数字のみで定義されている。

    10位の数字

    構造体の素材で分ける
    数値意味
    (無)木造電車(主電動機出力85kW)
    1・2木造電車(主電動機出力100kW)
    3〜半鋼製電車、鋼製電車

    1位の数字

    車種で分ける。
    数値意味
    0〜4電動車(両運転台・片運転台・中間電動車で別形式とする)
    5〜9制御車・付随車

    番号は001より始まる。
  2. 昭和28年式 昭和3年式の形式2桁+番号3桁の方式に加え、 木造車・買収社形用に形式と番号とを合算式で表記する4桁形式を作った。 該当車種は少数形式が多いため、最小10区切りで詰め込んだものとなっている。
    以下では、それ以外の形式2桁のものについての規定を示す。

    10位の数字

    基本的な車体長で分ける。
    数値意味
    (無)木造車・買収社形
    1・217m級電車
    3〜20m級電車

    1位の数字

    車種で分ける。
    数値意味
    0〜4電動車(両運転台・片運転台・中間電動車で別形式とする)
    5〜9制御車・付随車

    上記の中での順番は基本的には登場順。 昭和28年式では、以下に従っているようだが、 例外もあるため厳格な規定ではないらしい。


    番号は000より始まることとなった。

昭和3年以前の付番方式

大正3年式

総論

鉄道友の会会報Railfan 2005年10月号p.7に柴田東吾氏によるまとめが掲載されている。 以下、それに基づいて記述する。

この当時、電車は客車の一部として扱われており、 構造用途を示すカナ記号に続けて4〜5桁の数字で表される。 カナ部と数字部分とは独立しているとする立場なので、 カナ部が異なっていても、数字が重複しないように付番されている。

カナ記号

運転機器に関する仕様を示す部分に、用途・客室構造に関する仕様を示す部分を 連結したものからなる。

運転機器に関する仕様部は、以下の3通り。
記号車種
制御電動車(この時代、中間電動車は存在しない)
制御車
付随車
用途・客室構造に関する仕様部は(当時の)客車に準ずる。

数字の意味

数値範囲意味
6100〜6499各種電車
16100〜16499上記より番号溢れしたもの
26100〜26499メートル法準拠標準設計車
36100〜36499メートル法準拠標準設計車
46100〜46499メートル法準拠標準設計車
66100〜66499メートル法準拠標準設計車
76100〜76499メートル法準拠標準設計車
原則として優等車ほど若番。すなわち、 2・3等合造車、3等車、郵便荷物合造車、荷物車の順に、 また、 電動車、制御or付随車の順に 番号が大きくなる。

番号溢れについては、蒸気機関車の明治40年式の8620形、9600型の付番と同様である。 該当部分を参照のこと。

明治43年式

総論

鉄道友の会会報Railfan 2005年10月号p.7に柴田東吾氏によるまとめが掲載されている。 以下、それに基づいて記述する。

この当時、電車は客車の一部として扱われており、 構造用途を示すカナ記号に続けて3〜4桁の数字で表される。 カナ部と数字部分とは独立しているとする立場なので、 カナ部が異なっていても、数字が重複しないように付番されている。

カナ記号

客車重量記号(当時は、ホ・ナのみ)に続き、電車を示す記号デを附した。 当時は電動車以外の電車がなかったため、制御車などの区分の必要性がなかったためと考えられる。
用途・客室構造に関する仕様部は付さない。これは、当時の電車がすべて3等車であり、 それ以外の車種が製造されることを想定していなかったためと考えられる。
ただし、荷物合造車が実際には製造され、ホニデ、ナニデとされた。 また、電装品入手難のため制御車として製造された車両があり、ナトデとされた。

つまり、この時代の形式名のカナ記号は、ホデ・ナデ・ホニデ・ナニデ・ナトデの5種がすべてである。

数字の意味

数値範囲意味
950〜9992軸車
6100〜6499ボギー車

昭和28年式以降についての 具体例はここを参照 戻る