第1.” 裁定後 支分権派生説 ” とは… 本来の支分権 / 当会・一部の判決等の見解…(詳細 → こちら)
1. 年金受給権(年金基本権)は、厚生労働大臣の ”決定の裁定” という当事者の意思表示を経て成立します。
2. 年金支分権は、年金受給権の成立直後に到来する偶数月を最初の支払期月として、順次 派生します。
3. 消滅時効の対象になる権利は、年金受給権 及び その年金受給権に基づき派生した年金支分権です(法102/1)。既にその権利が成立し、権利を行使することができる時に至って初めて時効を進行させることができます(民法166/1)。
4. 裁定前支分権成立説に立った公務を行えば、少なくとも、六つの明文規定に違反します。賠償責任のある不法行為にも当たります(民法709)。公務には、判決行為及び行政不服審査法に基づく審査請求・再審査請求の審決行為も含まれます。
(1)① 民法146条(時効の利益のあらかじめ放棄の絶対禁止)
② 民法166条1項(消滅時効の進行の起算点)
③ 国民年金法(以下、法)16条(当事者の意思表示としての裁定。一部の説で違法に該当)
④ 法102条1項(時効の対象になる権利、起算点、起算点は遡及せず)
⑤ 法102条1項括弧書き(時効の対象は、受給権を基に派生成立する支分権)
⑥ 法102条2項(支給停止(法18/2)のときの時効の停止) …です。
(2)明文規定に違反する公務を行うと、国家公務員法98条(法令遵守義務)、同97条(宣誓義務)、同99条(信用失墜行為の禁止)、同82条(懲戒)の対象になります。
(3)明文規定に反する判決をした裁判官は、一つの違反であっても、当然、憲法76条3項(特に、裁判官の職責)に抵触し、同78条(特に、弾劾による罷免) 及び 裁判官弾劾法2条(弾劾の事由) 又は 裁判所法49条(懲戒)・同82条(裁判事務の取扱方法に対する不服申立)の対象になります。
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第2.” 裁定前 支分権成立説 ” とは
…仮想の支分権 / 多くの解説書・判決等の見解…(詳細 → こちら)
1. 65歳に達した日や障害認定日等という 決定の裁定成立日より前倒しした時点で 国民年金の支分権は成立する。
2. 従って、前倒し成立した支分権であっても 5年を超えれば、当然に 前倒しして 時効消滅する。
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第3.”裁定前支分権成立説” の様々な矛盾
…(詳細 → こちら)
1. 65歳に達した日や障害認定日等の時点では 債権債務関係の成立要件(”決定の裁定” という当事者の意思表示。法16)を欠いており、年金受給権は成立していません。
2. 消滅時効の対象は ”年金基本権”(法102/1本文)と これに基づく ”本来の支分権”(同 括弧書き)に限定されています。裁定前の偶数月は 支払期月には当たらず、仮想の支分権。対象にするのは、規定に反し違法です。
3. 裁定前支分権を 正常に展開できません(法18/3)。
年金支分権だけを、決定の裁定より前倒しして成立させようとするからです。
4. 裁定前支分権の年金対象期間(法18/1)は、裁定成立後の最初の支分権に含まれるべき期間です(同18/3)。
5. この説は、決定の裁定が下されるまでの間は年金の支給も停止させる説でもあります(法18/2)。
すると、時効の進行も停止する(法102/2)法律上の障害が存在し、消滅時効は完成できません。
6. この説は、5年を経過した分だけでなく、5年以内の裁定前支分権にも支払遅延損害金(民法412、同415、同404)の支払義務が生じるという説でもあります。違法な主張を根拠に、損害金を支払うことはしていないハズです。
7. あらかじめする 裁定前支分権に対する消滅時効を適用する旨の周知は、 ”時効の利益の放棄”(絶対禁止規定。民法146)に触れ、自ずから無効です。5年を超える年金受給権、同支分権も有効に成立しています。
8. 裁定前支分権成立説の論拠は、判決、解説書によってまちまちです。法的な根拠がないから、その場限りとなり統一できないのです。共通するのは、決定の裁定より前倒しされた ”支給すべき事由の生じた日の属する月の翌月(法18/1)” に年金支分権が成立しているとの論述です。
9. 裁定前支分権成立説は、時効の規定(法102/1)を代用して行う 法的根拠のない 年金支分権の期間制限(除斥期間)であり、違法です。
10. 支給の遡及期間を5年に制限するなら、法18条に年金支分権の期間制限(除斥期間)の項を置くなどの 根拠規定を設ける必要があります。
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第4(1).基本権 と 支分権(その1)
…成立・派生、時効消滅との関係…(詳細説明準備中)
1. 年金受給権は、裁定請求を受けてする厚生労働大臣の決定の裁定を経て成立します(法16)。
2. 年金支分権は、年金受給権が成立した直後に到来する偶数月を最初の支払期月として、順次、波及的 かつ 芋づる式に成立し、年金受給権から独立します(法16、同18/3)。
3. 消滅時効の進行(民法166/1)を適用できるのは、厚生労働大臣の決定の裁定を経て成立した年金受給権と、年金受給権が成立後の偶数月(支払期月)の到来によって派生・成立した年金支分権です(法102/1)。
4. 年金受給権は、年金の振込支給が 通常 偶数月の15日にあり、この時点で一旦時効は中断し(民法147/三)、新たに進行が始まります。そのほかに時効の中断事由が生じるごとに中断し、新たな進行が繰り返され、最後の中断から5年を経過すると時効は完成します。
派生した年金支分権は、支払期月という始期付きの期限なので(終期は支払期月の末日)、その初日が到来すると、消滅時効が進行します。終期の翌日からではありません。
システム障害等によって、年金の支給額不足が生じた場合でも、5年で時効が完成するので、注意・点検が欠かせません。
5. 年金の支給停止中(法18/2)は、時効の進行も停止しています(法102/2)。
なお、停止中であっても、年金支分権は派生後 独立しており(前記”2”)、支払期月も既に確定しています。従って、これを変更したり、新たな支払期月の設定をすることは出来ません。後日、追加支給又は停止の解除による支給が生じると、当然に、支払遅延損害金(民法412、同415、同404)の請求対象になります。
6. 従って、決定の裁定をした日より過去に遡って、年金支分権は成立するものではなく、消滅時効を適用することはできません。
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第4(2).基本権 と 支分権(その2)
…給付の対象期間、権利の存続期間…(詳細説明準備中)
1. 年金受給権及び年金支分権には、 ”給付の対象期間” と ”権利の存続期間” があります。この二つの期間には、一部期間に重複があるものの、別個のものです。裁定前支分権成立説は、この分離を怠った主張です。
2. ”給付の対象期間” は、年金給付の対象になる期間であり、その始期は、”支給すべき事由が生じた日”(法18/1。例えば、老齢基礎年金では ”65歳に達した日”、障害基礎年金では ”障害認定日等の日”)です。過去形の定義になっているのは、国民年金が後払い方式を採っているからです。始期は、必ず、支払期月に先行する日となります。
だからといって、この始期の到来によって、年金受給権が自動的に成立するものではありません。
3. 年金受給権の成立要件には、不文の法として ”当事者の意思表示” を要するとされています。
この意思表示が 国民年金の場合、裁定請求を受けてする厚生労働大臣の決定の裁定に当たります(法16)。
つまり、厚生労働大臣の決定の裁定を経て 年金受給権が成立すると、”支給すべき事由が生じた日” に遡及して年金の支払額を算定し、年金受給権の成立直後に到来した偶数月を最初の支払期月として支給が始められることになります。
従って、年金支分権の計算期間は、最初は2ヶ月を超える長期間となり、次からは2ヶ月間となります。
4. 類似の債権債務関係に、NHK放送受信料があります。
平成29年12月6日 ”受信契約締結承諾等請求事件 ” 大法廷判決では、”受信設備の設置の時からの受信料を支払う義務を負うという内容の契約が,意思表示の合致の日に成立する” と定義しており、裁定後支分権成立説に依っています。
これを年金受給権に当てはめると ” 支給すべき事由の生じた日からの年金を支払う義務を負うという内容の受給権が,決定の裁定の日に成立する。” となります。裁定前支分権成立説は、成立しないということです。
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第5.国民年金の債権債務関係の成立構造
…法16条、18条、102条の相互関係…(説明準備中)
1. 法第16条(裁定)
(1)年金受給権は、物権や法定債権とは異なる諾成債権の一種です。
諾成債権は、” 当事者の意思表示 ” という不文の法を要件として 成立するものです。
(2)年金受給権は、厚生労働大臣の ” 決定の裁定 ” という当事者の意思表示を経て成立することをこの条文で規定しています。
(3)年金受給権は、その履行の条件として、支払期月ごとに分割支給するとしているので(法18/3)、年金基本権としての特質を持つ債権の一種です。
支払期月が到来すると、その年金基本権を基に、年金支分権が派生・独立するという構造をしています。
(4)当条に規定する ” その権利を有する者(以下「受給権者」という。)” については、” 裁定請求の権利を有する者 ” と解釈しないと、この条文は機能しません。解釈誤りは、支離滅裂の論理展開をする根源となります。
2.法18条(年金の支給期間及び支払期月)
(1)この条項は、年金基本権が、厚生労働大臣の決定の裁定によって成立した場合における履行の条件を規定するものです。
あらかじめ規定されているからといって、この条項自体が、年金支分権の成立を直接に規定する作用はありません。年金支分権は、年金受給権を基にする支払期月(法102/1括弧書)の到来を待って、初めて芋づる式に派生・独立を始めるものだからです。
(2)まず、年金の通算支給期間を ” 支給すべき事由が生じた日の属する月の翌月から始め、権利が消滅した日の属する月で終る ” と定めています(法18/1)。
”支給すべき事由が生じた日 ” とは何時の日か…ですが、具体的には、年金の種類ごとに規定されています。例えば、老齢基礎年金なら法26条(65歳に達したこと、他)、障害基礎年金なら法30条(障害等級に該当していること、他)等です。つまり、各年金の種類によって規定される日の総称として用いている定義です。
更に、分割支給のために年6回の偶数月を ” 支払期月 ” と定め、その計算期間を ” それぞれの前月までの分 ” と定め、計算期間を細切れに切り分けています(法18/3)。
(3)なお、” その支給を停止すべき事由が生じたとき ” と定義し、該当する年金支分権の ” 支給を停止する ” ものとしています(法18/2)。支給停止の事由には、各年金の種類ごとに縷々法定されています。停止が解除された年金支分権、及び、法令の根拠のない任意の停止は、履行遅滞に当たります。年金支分権は、既に独立しており、後刻に至って支払期月を変更することができないからです。
3.法102条(時効)
(1)年金受給権(年金基本権)は、” その支給事由が生じた日から五年を経過したとき ” は、時効によつて消滅するとされています(法102/1本文)。
(2)また、年金支分権については、消滅時効の対象を ” 年金受給権に基づくもの ” と明記し、同様に5年で消滅すると規定しています(法102/1括弧書)。
裁定前支分権成立説の主張する 年金受給権に基づかない ” 仮想の支分権 ” のようなものを対象にすることは明文規定(法102/1括弧書)に直接に反するもので、明らかな違法です(前記 ” 第1.4(1)⑤ ” )。
(3)年金基本権及びその支分権も ” 支給事由が生じた日 ” をもって消滅時効の起算点とすることを規定しています。しかし、同じ日ではありません(前記 ” 第1.(4)4 ” 参照)。
(4)権利の成立時期とその権利に適用すべき消滅時効の対象になる権利は表裏一体の関係にあります。権利が成立していなければ、消滅時効を適用することがでないということです。
更に、権利が成立していても、その権利を ” 行使することができる時 ”(民法166/1)に至らなければ起算点とすることができません。結局、年金債権の場合の起算点である ” 支給事由が生じた日 ” (法102/1本文)は、権利の成立した日となります。
なお、年金基本権及びその支分権は、決定の裁定の前にあっては いつでも行使出来る債権には当たりません。決定の裁定を経て成立してから行使できる権利だからです。
(5)年金受給権の成立日は、決定の裁定通知書が裁定請求者に到達した日(民法97)の翌日(民法140但書)となります。
また、各年金支分権の派生成立日は、まちまちとなります。成立した年金受給権を基に、その直後に到来する偶数月を最初の支払期月とし、以後は、順次到来する偶数月である各支払期月とし、その各支払期月の初日(民法140本文)となります。
(6)年金支分権につき支給の停止の処分中のときは(法18/2)、停止が全額であれば、時効も停止します(法102/2)。明文規定(法102/2)に直接に反するもので、明らかな違法です。常識的にも、支給を停止しておきながら、消滅時効だけを進行させるという虫のいい理屈は、信義則に反し権利の乱用にも当たり(民法1/2~3)、違法です。
(7)” 支給事由が生じた日 ”(法102/1)と ” 支給すべき事由が生じた日 ”(法18/1)とは似通った表現ですが、前述のようにその意味は全く異なります。念の為。
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第6.” 裁定前 支分権成立説 ” の総点検
…多くの著書・判決等の矛盾点の詳細な点検…(説明準備中)
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第7.” 障害認定基準 第8節 2 E 発達障害(3)” は、国民年金法を逸脱し 違法
…(説明準備中)
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第8.844号通知(診断書提出の原則条件)の例外事例への強行適用は、国民年金法を逸脱し 違法
…(説明準備中)
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☆ 年金制度は国民の無形財産!
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